ドナウ地域とその多彩な風景は、今でもオーストリア人の心の拠り所です。全体から見ると国土の約15%に過ぎませんが、全人口8百万人の内の半分以上の人々が、この地域に住んでいます。首都のウィーンを包括するドナウ地域は、オーストリア経済の原動力でもあります。
しかし、これらの事実とドナウ川はあまり関係がないようです。時代が過ぎ去り、世の中の変化が加速しても、ドナウ川は今まで通り変わりません。また、川は世紀と世紀の境をあいまいにすると同時に、苦もなく異なったものをつなぎます。例えば、リンツで行われるフェスティバルでは、ハイドンの弦楽四重奏曲とアルス・エレクトロニカの脈動するリズムを結び付け、華やかなバロック修道院とアステンAstenにあるパノイムPaneumの落ちぶれた建築物とを結び付け、「ゴ・エ・ミヨ」に選ばれたレストランの極上のディナーとガストホーフのシンプルでいて美味しい冷菜とを結びつけ、また、ドナウ汽船の船長の監修の下、電動アシスト付きマウンテンバイク用のサイクリングコースと、ロマンチックなリバークルーズとを組み合わせました。
「ボートは波立つ水面に揺れ、古城は空に向かってそびえています」と、ウィーンの詩人ヨハン・バプティスト・マイヤーホーファーはかつてお気に入りの川について書いています。「モミの森は神秘的にざわめき、心は和ます。」