オーストリアのビール文化

オーストリアはワインの国というだけではなく、長い歴史のあるビール文化もあります。原料から量に関すること、人気の銘柄、ビール専門のホテルに至るまで、オーストリアのビール醸造に関する事柄が良く分かるこのミニガイドに目を通してください。それでは、ビールの旅に出かけましょう!

オーストリアは、チェコ共和国に続き、一人当たりの年間ビール消費量が世界第二位を誇ります。その量は、一年間で一人当たり平均大きいグラス206杯、または、106リットル消費していることなります! オーストリア国内には実に約300カ所もの醸造所があり、その数は増加の一途をたどっています! その内、最大のメーカーはブラウ・ユニオン(ハイネケンの一部門)です。シュティーグルは単独のビール会社としては国内最大です。

オーストリアには豊かなビール醸造の歴史と伝統があり、何世紀にもわたるオーストリアのビール製造技術は洗練の域に達し、現代のビールにはまねのできない昔ながらの大樽で醸造した優れた味わいがあります。ビール醸造は、基本的にはバイオテクノロジーの応用です。自然の製造プロセスを用いて、自然の原料を自然の飲み物に変換します。それらに加えて、何代にもわたる熟練の技術と、他の多くの国々が自国の法令作成の手本にもした、オーストリアの厳しい食品規制に基づき製造されたオーストリアのビールは、とても純粋で、何も損なわれていないとびきり美味しいビールです!

ビアガーデン

オーストリア人は、友達や知人たちと楽しくビールを飲むのが大好きです。そのような機会に、特に5月から10月の温かい季節に、親しい人々と集うにはビアガーデンは最適な場所です。ビアガーデンは19世紀頃からでき始め、その起源はドイツのバイエルンにあります。夏の間もビールを発酵に最適な温度4°C~8°Cで貯蔵するために、ビール醸造者は地下に深い貯蔵庫を作り、氷を持ってきて一年中最適な温度で貯蔵していました。さらに貯蔵庫の温度を下げるために、地上には栗の木を植えて、砂利を敷き詰めました。そして、じきにその木々の木陰にはテーブルが置かれました。その時以来、そこにビアガーデンの文化が生まれたのです。

オーストリアのビールの概要
ビールを注文する

ビールには、すでによく知られている種類が多数あります。

メルツェン(Märzen): バランスがとれた麦芽の味わいとマイルドなホップの苦みがある、淡い色合いのビール
ピルスナー(Pils): 下面発酵された強いホップの苦みと、しっかりとした味わいのある淡い色のビール。
スペシャル・ビール: 少なくとも12.5%以上のオリジナルの麦芽汁で造られたしっかりとした味わいのビール。
小麦ビール(Weizenbier): 少なくとも50%の小麦モルトで造ったビール。
ツヴィッケル(Zwickel): 酵母と溶解しないタンパク質により濁った、ろ過していないビール。 

注文したビールの量と、その上に厚さ約5センチの泡が注げる、さまざまな種類のグラスの中からお好みのサイズを選んでください。以下のグラスは、最も一般的なサイズです:

エクストラ・スモール(Pfiff): 0.2l
スモール(Seidel/Seitel/kleines Bier): 0.3l
ラージ (Krügerl/großes Bier): 0.5l
スーパーサイズ: 1l。 このサイズのグラスはバイエルンから輸入されたもので、ほんの一部の地方フェスティバルでしか提供されていません。

ビールを醸造するオーストリアの主な地域

実のところ、オーストリアの人々はワインよりもビールをたくさん飲みます。この特質はビール会社のツアーやビアガーデンを訪れて見るとはっきりと理解できます。

ウィーン

たくさんの有名な歴史的な出来事や芸術などと並んで、ウィーンは独自のウィーン・ラガービールでも有名です。1840年代の初めに、醸造所の若いオーナー、アントン・ドレーアーが、ウィーン近郊のシュヴェッヒャートにある小さな醸造所で造り始めたのが始まりでした。彼のビールは品質が高いだけではなく、琥珀のようなすばらしい色合いと軽快なホップの香りが自慢でした。

コクのある風味に角の取れた淡いホップの苦みが特徴的なその味わいは、国際的な称賛を浴びました。

とはいえ、驚いたことに、このビールはオーストリア人の好みからは外れていました。しかし、ここ数十年の間、野心的な若いビール醸造者たちは古き伝統を呼び戻し、この正真のウィーンビールを再び製造しています。その例として、オッタークリンガー醸造所のろ過していないビール ローテス・ツヴィックルや、オーストリアのヴァルトフィアテル地方にある小さな町のビール工房で造られているハドマール・オーガニックビールなどが挙げられます。ウィーンの第7区にあるジーベンシュテルンブロイは、昔のビールや忘れ去られたビールの製造法を再び紹介する動向に早くから参加していました。 

ウィーンとウィーン空港の中間に位置するシュヴェッヒャート・ビールは、現在でもオーストリアで最大のビール会社ですが、彼らの造るビールはアントン・ドレーアーが造ったオリジナルのウィーンスタイルのビールとはほとんど似ていません。国際的な市場においては、それが大きな会社の製品であっても、中規模の醸造所が造った製品であっても、ライトで飲みやすいビールが好まれています。オーストリアにおいても、それは変わりません。オーストリアで最も人気のあるビールはメールツェン(Märzen pronounced "mair-tsen")と呼ばれる、ライトなラガービールでアルコール度数5%のマイルドな苦みが特徴のビールです。


ザルツブルク

いろいろなモルツ(麦芽)のことや、どのようにして麦がビールとなってジョッキに注がれるのかを知りたいのなら、ザルツブルクを訪ねてみてください。シュティーグル・ビールは、以前麦芽製造に使用していた建物をヨーロッパ最大のビール博物館としました。シュティーグル・ブラウヴェルトでは、小麦栽培、醸造技術、銅加工技術と樽造り、および、ビールの消費と業界とのつながりと発展について展示説明しています。ここはザルツブルクですから、当然ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルトが関わってきます。彼はシュティーグル醸造所のビールを賞味したことが知られています。地階にある昔麦芽製造を行っていたフロアには小さなビール醸造工房があり、ここで造られたビールと、隣にある大きな醸造所で造られた製品との違いを飲み比べることができます。

ミュールフィアテル地域

ドナウ川とボヘミアの森との中間に位置するミュールフィアテルは、オーストリアの伝統的なビール醸造地域の一つで、優れた品質のビールをたくさん製造しています。ミューフルフィエテル地域の人々が、ビール醸造に長けているのは偶然からではありません。この地域の花崗岩を含んだ土壌が水をろ過して、より純粋で柔らかいビール醸造に最適な水に磨き上げています。そして、ここにはこの土地で栽培される最高品質のホップがあります。オーストリアでこの地域ほど多くの種類と多量のホップを栽培しているところは他にありません。この地域には、シュレーゲル修道院にあるオーストリアで唯一の男子修道院の醸造所や、サンクト・マルティンにあるオーストリア最古の醸造所グーツブラウホーフ、フライシュタットにある長い歴史を持つビール醸造地方自治共同体や、数え切れないほどの城の中にある醸造所、宮殿の醸造所、その他の小さな醸造所があります。

また、「ビアガストハウス」のオーナーで、賞を獲得したビール・ソムリエのカールとフェリックス・シフナーのような実験的な醸造者もいます。彼らの提供するビールには150種もの種類があり、それらの中には3つの醸造所から厳選した4種のビールをブレンドしたビール「キューベ」といった非常にクリエイティブなビールも含まれています。

ベスト・オブ・ホップ ー ぜひ訪ねたいオーストリアの12の醸造所

オーストリアはビール愛飲家の国で、これは何世紀にもわたる伝統です。オーストリアには、長い歴史を持つ小さな醸造所から、風変わりな創作ビールを提供する新しいクラフトビールの醸造所まで、さまざまなビール会社があります。ここに挙げた12のオーストリア・ビールの醸造所を訪ねて、すべてのビールを飲み比べてみましょう!

ビールは、オーストリアで人気のある飲み物の一つです。平均的なオーストリア人は、年間100l以上ビールを消費しています。オーストリアの醸造所には長い歴史と古いビール醸造法がありますが、彼らは新しい製品アイデアを基に実験的な作品も造っています。その柔軟な姿勢が、国際的にも注目を集めています。これらのうち何人かのビール製造のアーティストたちは、テイスティングのためにゲストを招き、生産現場を一般に公開しています。もっとオーストリアのクラフトビールの詳細や味について知ってください。

ウィーンとニーダーエステライヒ州

オッタークリンガー(ウィーン)

オタックリンガーは、おそらくウィーンの最も有名なビールでしょう。ブラウヴェルクという自社のクラフトビール工場では、とても優れた季節ごとの特別なビールも製造しています。それぞれの特製クラフトビールは、3つの主原料の内の1つを使用して、それぞれ固有の特徴を引き出しています。ハウスマルケ1というビールの味は、主に酵母で出しています。ハウスマルケ2はホップで、一方ハウスマルケ3は麦芽で、それぞれの味を出しています。

シュレムザー(ニーダーエスティライヒ州)

「ヴァルトフィアテラー・ラントコルン」の名で知られるこの醸造所の特別な小麦から造られるこのビールは、すべての行程で環境に優しい方法を用いて生産されています。シュレムザー・ビールの特別な味わいは、ヴァルトヴィアテル地方の石灰岩の成分を豊かに含んだ軟水から生まれます。 

ツヴェットラー(ニーダーエスティライヒ州)

ツヴェッテルの町では、今でも300年前から受け継いできた古き職人の醸造技術でビールを製造しています。有機栽培されたホップと麦芽は、ボヘミア岩体の原初の岩にろ過された水によって混合され、このバイオ・ビールに焙煎された麦芽の芳醇な香りが与えられます。

オーバーエステライヒ州のビール醸造所

ホーフシュテットナー・ビール(オーバーエステライヒ州)

ホーフシュテッテン醸造所の特別なオリジナルビールが、「グラニット・ビール」(花崗岩ビール)という、その昔、石切職人たちに滋養を与えていたビールです。ミュールフィアテル地域の花崗岩層は、水のフィルターのような働きをします。色の薄い麦芽と色の濃い麦芽、および、100%ミュールフィアテル産のホップが、このビールに本物のなめらかな味わいを与えています。

フライシュテッター・ビール(オーバーエステライヒ州)

オーバーエステライヒ州フライシュタットの人々は、1363年以来ビールを醸造しています。この土地の岩盤と、ミュールフィアテル産のホップ、厳重に管理された地元産の酵母によって造り出されるのが、首尾一貫して品質の高いフライシュテッター・ビールです。

エッゲンベルク城の醸造所(オーバーエステライヒ州)

職人の深い心配りと、220年に渡り8代受け継がれた経験が、このザルツカンマーグート地方にある家族経営によって運営されているエッゲンベルク城の醸造所の美味しいビールに注がれています。もちろん、今は21世紀ですから、最新のテクノロジーも導入されています。

オーストリアの南と東部

ムーラウアービール(シュタイアマルク州)

100%再生可能エネルギーによって稼働しているヨーロッパ初の醸造所であるムーラウアービールは、国際ビールコンテストでも成功を収めています。2017年の世界ビール賞で、ムーラウアー・メルツェン、ムーラウアー・ヴァイスビア、そして杏子とエルダーベリーから造った爽やかな味わいのラードラーという、3つのビール銘柄が金メダルを獲得しました。
シリングビール(ケルンテン州)

2013年からケルンテン州のノックベルクでも、ビールを醸造しています。シリングの醸造所は、この地域の「楽しい職人たち」の職場です。この現代的なビール工場では、地元産のウッドチップをエネルギーとしてホップや麦芽を醸造し、「ガーネット・ビール」や「ノックエール」など幅広い種類のビールを製造しています。

ゴルザービール(ブルゲンランド州)

この醸造所の美味しいビールは、栗、スペルト小麦、ハーブ、フルーツ、スパイスなど最高品質の原材料で造られています。一部の銘柄のビールは、コールドホップ製法など現代の技術を用い、木製の樽で熟成されています。

オーストリアの西の地方

シュティーグル(ザルツブルク)

シュティーグルビールは、その最高レベルの品質で有名です。映画上映設備も完備した、ビール醸造の世界(ブラウヴェルト)博物館では、見学者がビールの世界に没頭でき、またシュティーグルの特設されたセラーでは、ハウスビアやヴィンテージビールなどの樽で熟成された特別なビールが味わえます。

ツィラータールビール(チロル州)

ツェル・アム・ツィラーでは、500年以上何世代にもわたって受け継がれてきた伝統的な醸造法によって、独特のビールが造られてきました。今日では最先端技術が使われてはい

モーレン醸造所(フォアールベルク州)

モーレン醸造所のクリエイティブなビール工房では、ビジターのビール愛好家たちは自分たちの好みのビールを造ることができます。経験豊かな醸造者による指導の下、自分たちの個々のスタイルのビールを決め、麦芽をひき、麦汁を準備し、澄まし、そしていよいよ醸造を始めます。それができ上ったら...、自分流のビールで乾杯!

オーストリアのビールを楽しめるホテル

ビール醸造所ツヴェットラーが経営するホテル:
Hotel Schwarz Alm in Lower Austria: www.schwarzalm.at

ビール風呂があるホテル:
Landhotel Moorhof in Upper Austria: www.landhotels.at
Hotel Diana in Seefeld in Tirol: www.hotel-seefeld-tirol.com

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