オーストリアのクリスマスの伝統

オーストリアのアドベント(待降節)の期間は、"1年で最も平和な時期 "としても知られています。クッキーを焼いたり、クリスマスのデコレーションをしたり、クリスマスキャロルを歌ったりと、クリスマスまでの数週間、家族で愛すべき伝統を共有する、昔ながらの風習が守られている時期です。

クリストキンドル・クリスマス特別郵便局

クリスマス前に臨時開設される特別郵便局は世界中にたくさんあり、特定の時期に手紙やはがきを送ると、クリスマス用の特別なスタンプを押してもらうことができます。

オーバーエーステライヒ州の古都シュタイヤーには、このクリスマス特別郵便局が置かれているクリストキンドルと呼ばれる町があります。このクリスマス郵便局も大変な人気で、毎年世界各国から送られる大量のクリスマスポストを処理しています。開設された1950年には、一人の局員が42000通の手紙やカードに、クリスマス郵便局の特別スタンプを押しました。その後、郵便物は年々増加し、近年には200万通を超える数字を記録しています。

では「クリストキント=幼いキリスト」という意味の地名がなぜつけられたのか、その由来をたどってみましょう。

人々が今よりずっと信仰心の厚かった17世紀の頃、シュタイヤーの町に指揮者で消防士のフェルディナンド・セントルという人物が住んでいました。彼は持病のてんかんの発作に苦しみ、人里離れた小さな森の中で暮らしていました。セントルはとても信仰深い人で、トウヒの木の幹に聖家族の絵をとりつけ、その前でいつも礼拝を行ない、健康の回復を願って一心に祈りました。そうして1695年ごろ、彼はシュタイヤー修道院のシスターから鑞でできた幼いキリストの像を買い、それをトウヒの木の中に納めたのです。

その時から、セントルは毎週その木の元で礼拝を行ない、自分が行けない時には妻をかわりに行かせました。すると不思議なことに、てんかんの発作の回数が次第に減り、ついにはまったく発作が起らなくなったのです。この出来事は、まもなく周辺のあらゆる人々に知られることとなり、多くの人々が、この聖像を拝みにくるようになりました。そして、1699年にこのトウヒの木の回りに木造の礼拝堂が建てられたのです。

ますます多くの人々が、この「クリストキント」の像を拝みにくるのを見ていたガルステンの大修道院長は、そこに教会を建てる必要があることをパッサウの司教に申し出、1708年4月16日、教会建築の許可が下り、5月31日に教会の礎石が厳かに設置されました。建設に着手したのはカルロ・アントニオ・カルロネ、あるいは彼の弟ジョヴァンニ・バティスタ・カルロネであるといわれています。そして、オーストリアのバロック建築家として名高いヤコブ・プランタウアー(メルクの修道院が代表作)が、この教会を完成し、司祭館を建築しました。今日では、祭壇のまん中にかつてのトウヒの木が置かれ、その後ろに雲の間を飛び回る美しい天使の絵がかけられています。祭壇の聖櫃は地球をかたどり、それぞれの大陸が浮き彫りになっています。

そして、たくさんの人々が礼拝に訪れるこの地に、1950年、クリスマス特別郵便局「ゾンダーポストアムト・クリストキンドル」が開設されたのです。この特別郵便局のスタンプをご希望の方は、住所と氏名(自分または他の受取人)を書いたカードや手紙に、国際返信切手券2枚(郵便局で発売)を添えて、下記へ送ってください。特別スタンプが押され、宛先へ届けられます。

*Sonderpostamt Christkindl A-4411 Steyr, Austria/Europe

*開局期間:11月29日~1月6日

*ウェブサイト

アドヴェント(待降節)

クリスマスの準備期間、待降節にはアドヴェントリースを用意します。田舎では祖父母が自分の手で作っています。モミの小枝を縛って輪にし、紫や金色のリボンで結び、4本のローソクを立てて、テーブルの上に置いたり、スタンドに掛けたりします。待降節(クリスマスの前の4週間)の最初の日曜に一本目のローソクに火をともし、二週間目には二本、三週間目には三本、最後のクリスマスの週には四本すべてに火が点されます。子供たちの興奮と期待はローソクの数とともに高まっていきます。
クリスマスの一か月ほど前から、各地の主要な広場ではクリスマスツリーとイルミネーションで飾られたクリスマス市が開かれます。人々は、ここでクリスマスのプレゼントを探したり、家でクリスマスの前に飾るクリスマスツリーのオーナメントを買ったりします。もちろん、市の屋台には暖かいポンチや、グリューワイン、ソーセージやスナックなど美味しいものもいっぱいです。
詳しいマーケットの情報はこちら


プレゼントは誰が持ってくるの?

クリスマスについてはどこの国でも同じことが言えます。初雪を楽しんだり、冬の散歩や外出で自然を体験したり、プレゼントを期待したり。しかし、オーストリアでは違うこともあります。例えば、オーストリアではプレゼントを持ってくるのはクリスマスのおじさんやサンタクロースではなく、「クリストキントChristkind」(キリストの子、イエスの赤ちゃん)だということをご存知でしょうか?プレゼントは12月25日ではなくクリスマスイブに開けます。クリストキントはどうやって子供たちの願いを確認するのでしょうか?オーストリアのいくつかの地域では、子供たちはクリスマスの手紙を暖炉に投げ入れるそうです。

聖ニコラウスとクランプス

各地で行われるクリスマスまでのもう一つの行事は、12月6日の聖ニコラウスの日の前夜5日に行われるクランプスの祭りです。宗教的なつながりはないものの、子供たちにとってはクリスマスへのステップとなります。聖ニコラウスは鬼のクランプスと一緒に、各家庭を訪ね、良い子たちに小さなプレゼントを持ってきます。また、悪い子にはクランプスに任せて罰を与えてもらうのです。ニコラウスは白い髭を伸ばしたやさしいおじいさんで、司教のような金色の帽子をかぶり、白い服装をしています。彼は最初に金色の本を開き、子供たちの一年間の行いを調べ、その良し悪しによってプレゼントを配ります。クランプスは地獄からくる鬼で、身体は毛に覆われ、頭には大きな角があり、長い赤い舌、尾っぽ、馬のような足が特徴です。彼は、鞭と鎖を持ち、その鎖で大きな音をたてながら、子供たちを怖がらせ、二度と悪いことをしないと約束させます。街をたくさんのクランプスが脅かしながら暴れる姿には、子供たちばかりか大人たちも震え上がります。しかし、そのあとは聖ニコラウスがやさしく子供たちを笑顔で包み込みます。オーバーエステライヒ州、チロル州、ザルツブルク州の「きよしこの夜」の村では、この伝統を12月6日に祝います。

聖誕祭の風景

毎年、12月24日から2月2日(キャンドルマスの日)まで、ザルツブルク州の農家やキリスト降誕シーンの彫刻家たちは、芸術的に作られた家族のゆりかごを公開します。また、愛情を込めて「地域のキリスト降誕シーン」を代々に渡り作ることも伝統となっています。

これらの地域のキリスト降誕シーンでは、聖書のキリスト誕生の物語が地域の環境に組み込まれています。ザルツカンマーグート地方における手作りベビーベッドの伝統とその個人的な展示は、1782年に皇帝ヨーゼフ2世が、教会が非常に豪華なキリスト降誕シーンを設置することを禁止したことに端を発します。これにより、熟練した職人が自分でキリスト降誕のシーンや人形を作り、家に飾るようになりました。その結果、「風景としてのキリスト降誕シーン」と呼ばれる大規模で複雑なキリスト降誕シーンが生まれたのです。

オーストリアのクリスマスイブ

いよいよ大人も子供も嬉しいクリスマスイブ――午後になると、父親は子供を誘って、雪の積もった公園の散歩や人形劇、色々な町のイベントに出かけます。その留守に母親たちは2メートル余もあるクリスマスツリーに、買ったり自作の藁の星やラメの飾り物、金箔を貼ったナッツ、絵柄の付いたジンジャー・ブレッド・クッキー、キャンデーなどを飾り付け、最後にローソクを吊し、プレゼレントをツリーの下に並べます。
子供たちが帰ってくるとイブの夕食が始まります。普段は口にすることのない鯉や七面鳥が食卓に並び、デザートは子供たちも手伝って焼き上げたクリスマスクッキーです。
食後、父親はそっと席を立ってツリーのある部屋に。ローソクに火を点し、電気を消して、いまクリストキントが帰ったことを知らせます。駆け付ける子供。子供たちの輝いた瞳に映る清らかなローソクの明かりに浮かぶツリー。そして待ちに待ったプレゼント。一家揃ってクリスマスキャロル「きよしこの夜」を歌うなか、それぞれにプレゼントが配られ、イブのクライマックスを迎えます。疲れてうとうとと眠りについた小さな子は床につけ、大人や大きな子供たちは、深夜のクリスマス・ミサに出かけます。
25日は、キリストの生誕を祝うために教会へ行き、午後は親戚や親しい友人宅を訪ねたり、一家でのんびりと団らんを楽しむのが、オーストリアのクリスマスです。

アルプスを駆ける 「ペルヒテ」

新年を迎えたチロルとザルツブルク州では、「ペルテン」の華やかなパフォーマンスが繰り広げられます。ペルヒテンとは、神話上の女神ペルヒタに関連するアルプスの伝統的な人物です。首に鈴やガラガラをつけて、怖い顔をしていますが、いわゆる「美しいペルヒテン」(良い霊を表す)と「醜いペルヒテン」(悪い霊を表す)が、冬の霊を追い払うために村を歩き回ります。衣装は木彫りの仮面や毛皮の服などで構成されています。ザルツブルグのピンツガウ地区にあるシュトゥールフェルデンという自治体では、「トレステラー」と呼ばれる美しいペルテンが足を踏み鳴らし、豊穣を祈って歌います。また、チロル地方の多くの村では、趣向を凝らしたペルヒテの行列が行われ、中には壮大なファイヤー・ショーが行われるところもあります。

昔ながらの伝統
アドヴェントの魔法

アドベント(待降節)の最初の日曜日には、クリスマスシーズンが始まりクリスマスマーケットがオープンします。大都市では11月中旬から開設されます。オーストリアのすべてのクリスマスマーケットはこちらでご覧いただけます。

ベツレヘムからの平和の光

12月24日、ベツレヘムからウィーンに平和の光がもたらされます。全国の人々がウィーンの駅や教会に集まり、ロウソクに火を灯して、その炎を全国に広げます。

待降節の歌

オーバーエステライヒ州では、キャロルシンガーが家々を回って歌を歌い、物語を語ります。これは、ヨゼフとマリアがクリスマスイブに宿を探している様子を表しています。

チロルのキリスト降誕シーン

チロルでは教会や博物館、個人のベビーベッド彫刻家が、キリスト降誕シーンの伝統を紹介しています。彫刻学校やクラブでは、自分で作るためのコースも用意されています。

田舎の伝統
田舎の伝統
  • 12月4日(聖バーバラの祝日)にはサクランボやリンゴなどの果樹の枝を摘んで水に挿します。12月24日までに花が開くと、幸運と豊穣が訪れると言われています。

  • ザルツブルク州では、いわゆる "クリッパーローアス"(キリスト降誕の場面を巡るツアー)で、ザルツブルク郷土工芸店(ハイマートヴェルク)やザルツブルクのクリスマスマーケットで開催されるキリスト降誕の展示会を巡ることができます。

  • クリスマスシーズンには、家庭では美しい素朴な飾りやキャンドル、お菓子などで装飾された本物の樹のクリスマスツリーが立てられ、家の中にもちょっとした自然が取り込まれます。

  • 伝説によると、クリスマス後の12月の冬の夜には、アルプスの女神で女性の守り神であるフラウ・ペルヒタが徘徊すると言われています。

  • オーストリアの多くの家庭では、飾り付けたクリスマスツリーを2月2日のキャンドルマスの日まで飾っておきます。

クリスマスクッキーを作りましょう

オーストリアのアドヴェントにはかかせないもののひとつとして知られる「クリスマスクッキー」は、家庭でもよく作られるお菓子の定番です。そのままクリスマスツリーに飾りたくなるくらいかわいらしい形をしたクッキーは、姿も味もさまざま。ここでは、そんな「クリスマスクッキー」の幾つかをご紹介いたします。

●リンツァー・アウゲン(ジャムサンド・クッキー)
[材料]小麦粉300g、バター200g、砂糖110g、卵黄2個、卵白、レモンの皮、マーマレード。
[作り方]
*レモンは外皮の黄色い部分だけをすりおろします。
*「クッキーの生地の作り方」を参考にして生地を作ります。レモンの皮は、卵黄を入れた後に加えて混ぜます。
*打ち粉をした台の上に、生地をとりだし3ミリの厚さにのばします。好みの型で抜いて天板に並べ、クッキーの上に刷毛で卵白を塗り、200度のオーブンの中段に入れて8~10分焼きます。天板からはずし、網にとって冷まし、2枚一組にしてマーマレードを挟みます。

●ヌスシャウム・ケクセ(ナッツクリーム・クッキー)
[材料]小麦粉180g、バター100g、砂糖40g、卵黄2個、牛乳大さじ2。
ナッツクリーム:クルミ300g、水、砂糖150g、牛乳大さじ1、バター20g。砂糖衣適量。
[作り方]
*「クッキーの生地の作り方」を参考にして生地を作ります。
*すりつぶしたクルミに、熱く溶かした砂糖、牛乳、バターを加え、混ぜ合わせます。
*打ち粉をした台の上に、生地をとりだし3ミリの厚さの長方形にのばします。ナッツクリームを塗り、砂糖衣をかぶせて細長く切り、油を塗った天板に並べてうっすらと焦げ目がつくまで焼きます。

●ヌス・リンゲ(リング形クッキー)
[材料]小麦粉280g、バター70g、砂糖120g、クルミ70g、卵1個、シナモン、チョウジ各少量(3~4g)、牛乳大さじ1、レモンの皮、溶き卵(つや出し用)適量。
[作り方]
*小麦粉とシナモン、チョウジをあわせて一緒にふるっておきます。レモンは外皮の黄色い部分だけをすりおろしておきます。
*「クッキーの生地の作り方」を参考にして生地を作り、ここのクルミを加えます。
打ち粉をした台の上に生地をとりだし、3ミリの厚さにのばしてリング型に抜きます。天板に並べ、クッキーの上に刷毛で溶き卵を塗り、うっすらと焦げ目がつくまで焼きます。

★クッキー生地の作り方
クリーム状によく練ったバターに砂糖を2~3回に分けて加え、よくまぜあわせます。白っぽくふんわりとしたら卵黄を加えて混ぜます。よくふるっておいた小麦粉を加え、木杓子でさっくり切るようにして混ぜ、冷蔵庫で30分ほどねかせます。

★砂糖衣の作り方
[材料]粉砂糖250g、卵白1個分、レモン汁大さじ1。
[作り方]ボウルに粉砂糖を入れ、卵白を加えて、木杓子でよくかき混ぜます。レモン汁を少しずつ混ぜ合わせ、少し固めの状態になるまで練ります。

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